書評「戦後史の正体」から見る日本政治と経済

「戦後史の正体」(孫崎享創元社)を読んだ。というか、まだ途中だが。

非常に印象的なくだりが読み終えた前半にもいくつかある。特に、
東京地検特捜部は、GHQの占領下に「隠匿退蔵物資事件捜査部」として発足し、戦後の混乱した国土の中から埋もれた・隠された資産を探し出し、GHQに献上することを目的に発足した。その後、時の政権・首相がアメリカの意に沿わないと、様々な手段を総動員して叩き潰して失脚されてきた、いわばアメリカの出先機関のようなものだと断定している。

確かに、中国に数百人の家来を連れて行き親中派と映った小沢一郎は、特捜部のねつ造の疑いまであるほどにでっちあげられ、失脚した。この本を読むと、この出来事も陰謀や謀略ではなく、事実であったに感じさせる。

首尾一貫して、戦後史とはアメリカの意のままに操られた日本、という構造を根底に語らない限り、大人に対しても日本の戦後史は意味が伝わらないとのこと。そのために高校生でも分かるように書いたそうで、非常になるほどと思わせる文体でもあり、全てが事実だとすると、この本はそう遠くなく、絶版になるのではないだろうか。
いわゆる政界の暴露本とも取れる内容だが、不都合な真実は伏せられてしまうかもしれない。出版を敢行した出版社の英断にも拍手。

戦後の占領下、冷戦時代、ジャパンアズNo1と言われた時期、バブル崩壊、を経て日本の国力はここ20年ほどすっかり衰えている。これは同時にアメリカの不景気もあってなのか、自由アメリカ民主党55年体制が崩壊し、民主党政権となっている今を、象徴しているのだろう。つまり、アメリカの日本に対する期待と監視が薄くなっている。

そして大震災に見舞われた後、次の時代を探るべく、アメリカからの自主独立を目指す動きが勝つか、アメリカ追従・属国を甘んじ続けるか、グレートリセットと言われることも、本質はアメリカとの関係をグレートリセットするかどうかが問われているのであり、地方自主権や道州制ではないはずで、逆に道州制を唱えている間は、アメリカにとってはどうでもいいはずだ。

道州制を唱える対抗馬に、自主独立を掲げる宰相が出てくる気配があったとすると、それは対抗馬である道州制アメリカが勝たせるだろう。ただ、現政権の野田、自民党、双方の代表選を戦う権力者達も、いずれも自主独立を掲げるようには見えない。ゆえに、アメリカからすれば、どーでもいい、選挙戦に映るのだろう。アメリカも大統領選に突入するので、日本を構っている暇もないかもね。

インターネットで世界の情報網を張り巡らせたアメリカ、それをもろ手を挙げて賛成し迎合し、ツイッターフェイスブックを使い倒して、日本の国民の情報を大量にアメリカに渡している状況。お隣の中国はグーグル、アップル、フェイスブックツイッターを締め出し、独自の情報網を築いている。アメリカと戦う姿勢があるならば、それが正しい。アメリカの庇護の下、安穏と暮らし続けるならば、ツイッターフェイスブックを使い倒すべき。

ただ、アメリカからの自主独立を唱える政治家は、せめてツイッターフェイスブックは使わないでもらいたい。その点、小沢一郎は、国産ニコニコ動画を愛用し、野田首相ザッカーバーグと握手してたけど、まあ、そんなところからも、透けて見える対アメリカ政策。

いやあ、たくさんのことを考えさせる本とめぐり会った。